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【ミュージカルの創り方】その2

コンテンツエリアでは、電脳音楽塾オンラインサロンに投稿されている有料オンライン講座から、一部をご紹介しています。今回のコラムは、ミュージカル演出家の「菅野こうめい」が担当。

【菅野こうめいプロフィール】

【ミュージカルの創り方】その2

ミュージカルにおける歌は台詞である。しかも、その歌はストーリー上、登場人物(歌い手、俳優)の感情のピークに配置されること

<ミュージカル脚本の基本 その2>
ミュージカルを創るにあたって、まず必要なものは「脚本」であるとお話しました。しかし、ミュージカルの脚本ほど難しいものはありません。と、ここできっぱりと言っておきます。(笑)ミュージカルの執筆には、ドラマと音楽(歌)、舞踊など全ての芸術に精通したセンスが求められるからです。よく脚本家(ミュージカルを書いたことない)の友人達から質問を受けます。

「どこで歌にして、どこで台詞にしたらいいなんて判らない。だから書けない。どうしてるの?」と。その答えは至極簡単です。この前の講座の最後に申し上げた一言。

「ミュージカルの歌は、ストーリーの流れにおいて、登場人物の感情のピークに配置されること」。これだけを守っていれば、絶対にヘタなミュージカルにはなりません。

よく、「ミュージカルが苦手」と言う人達にその要因を聞くと、多くの人達が「だって突然歌い出すし、訳わかんない」と言います。これには、「本当に可愛そうなことをしましたね。へたくそな脚本、へたくそな演出の作品しか見てこなかったのですね」と申し上げて、少しでも溜飲をさげてもらうしかありません。

言い方を変えれば、ミュージカル作家は、脚本のどこに「歌」を配置するかだけを考えればいいのです。

人生の中で歌になる瞬間に出逢ったり、歌が生まれる瞬間を経験したことが、きっとみなさんにもあると思うのです。それはどんな瞬間でしたか?

たとえば恋。プロポーズや告白をした相手に「Yes」と言われた瞬間。飛び上がりそうな歓喜の感情に襲われた時、思わず歌い出したくなりませんでしたか?

その逆に、愛した人に振られ、一人うつむいて歩いていると突然雨が降り出して、ずぶ濡れになりながらどうやって家にたどり着いたかも判らなかった夜、打ちひしがれて悲しみの歌を口ずさみそうになった事はありませんか?

とにかく、人間は愛であれ、憎しみであれ、絶望であれ、何らかの感情の昂ぶりがあった時、歌を生み出すことが出来るのです。

ミュージカル的に言い換えれば「俳優は愛であれ、憎しみであれ、絶望であれ、何らかの感情の昂ぶりがあった時、初めて台詞から歌に入る事が出来る」のです。この法則を無視してしまうと、ミュージカルは「突然歌い出す、変な人達のお芝居」に成り下がってしまいます。

<見事に創られたミュージカルシーンのサンプル>
もちろん、その法則に従って書かれ、クリエートされた名シーンは古今東西、たくさんありますが、今日は皆さんの記憶に新しいであろう一つのシーンを例にあげて説明しようと思います。それは映画 “グレイテスト・ショーマン” の1シーンです。歌われるナンバーは「From Now On」。

目紛しいスピードで富・名声を築いてきたヒュー・ジャックマン演じる主人公「バーナム」は、物語の終盤ですべてを失います。彼の育ててきたサーカスには火をつけられ、心を寄せていた歌手は辞め、妻と子供たちは彼の元から去ります。後悔の念となぜ自分が富や名声を必要としていたのかを考えた時、一つの答え「すべては愛する妻のため」だったことに気づきます。そして仲間たちが「もう一度やろう」とバーナムの元へ駆け寄るのでした。

この場面の「感情のピーク」とは、主人公が「絶望の淵」に追い詰められている状況です。ですから、主人公は歌とも、つぶやきともつかぬ声で「しゃべり」はじめます。まさに感情のピーク・絶望のどん底から、歌が生まれる瞬間です。

そこから彼は何とか這い上がろうともがき始めます。すると、それまでなんのリズムも持たなかった音楽にリズムが加わり、躍動感が生まれます。彼が希望の光を見つけたのです。


集まる仲間達、連帯が「舞踊」を呼び起こします。踊りは古代から、祈りや歓喜の表現です。絶望から始まった感情のピークは、やがて希望の昂ぶりに変わるのです。その流れが、言葉と音楽によって形成されているのです。


実に見事なミュージカルシーンだと思いませんか?

そして、こちらの動画は……

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*こちらのコラムは、2019/4/22 電脳音楽塾オンラインサロンに投稿されたものです。

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